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いきものがたり

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2018年 09月 14日

飼育員さんにインタビュー (情報誌マルキーズ2018夏号掲載)

アフリカゾウ家族の近況

4月から新しい体制でスタートしたゾウ班。椎名キーパーも三年ぶりに現場復帰され、新しくゾウ担当になった濱田キーパーの指導をされています。

今回は椎名キーパーと新米濱田キーパーにお話をうかがいました。

Q現場に入られるのは3年ぶりとお聞きしましたが、椎名キーパーが現場に戻られて、ゾウさんたちの様子はどうでしたか?

この三年、若い飼育員たちに現場の仕事はほとんど任せて、私はお手伝いという形でしか関わっていなかったのですが、
この春から、飼育課長という立場はそのままで現場にも入り、また、新しくゾウ担当になった濱田キーパーのサポートと指導に当たっています。

現場を離れていた3年の間もゾウたちとは顔を合わせてはいたので、私がゾウの中で現場作業をしていても、彼女たちにそう大きな変化はなかったですね。
リカさんや媛ちゃんとは一緒にいた年月が長いので、3年のブランクがあっても私を受け入れてくれていると感じました。
砥愛ちゃんはというと、指示に従わなかったり拒んだりする様子が最初少し見られましたが、最近は素直に指示に従ってくれています。

砥愛ちゃんは、媛ちゃんとは違ってリカさんが育てた子ですから、野性味溢れた活発さがあって当然なんですが、活発というよりお転婆過ぎる、
それに、我がままぶりが増してきたように思います。動物園のゾウとしての認識ができていないというか・・・()
媛ちゃんの年になると成長がゆっくりになるのですが、砥愛ちゃんの年の頃は成長が早いだけに、体と心を形成していく上で、とても大事な時期でもあります。
成長の段階で我がままになってしまうと、ずっと我がままになってしまうので、今のうちの矯正が少しだけ必要になってくるでしょうね。

飼育員さんにインタビュー (情報誌マルキーズ2018夏号掲載)_e0272869_18583903.jpg

Q濱田キーパーが砥愛ちゃんのトレーニングをしている時、椎名キーパーが砥愛ちゃんを叱っているところを見ました。
椎名キーパーがあんなに叱るところを見たことがなかったものですから、ちょっとびっくりしました。

ゾウと向き合っている時は、いつも真剣です。こちらが真剣だから、あの子たちにも響くのです。砥愛ちゃんはテンションが上がると、
キーパーにちょっかいを出すようなところがあって、命の危険と隣り合わせにいるキーパーの安全を図るためにも、叱るときは厳しく叱らないと・・・。

Qはい、確かに叱られた後、砥愛ちゃんは真面目にトレーニングを受けていました。
ところで、最近よく、濱田キーパーと一緒にパドックに入っていらっしゃいますね。

濱田キーパーは柵越しにお世話をすることはあったので、ゾウたちも彼の顔は覚えてくれていると思うのですが、
柵を介さない状態での作業を一人ですることはまだ危険ですから。私がそこにいるだけで、彼もゾウたちも安心してくれているはずです。

また、ひとりに一部屋が割り当てられてから、この部屋は自分のもの、自分のエリア、テリトリーという意識が強く、部屋の中では強気になったり、
人間に入られることを嫌がったりするようなところが見受けられるんです。
特に媛ちゃんは濱田キーパーが入ろうとすると威嚇するような態度をとったりしています。

ゾウたちは、この人の命令はきく、きかないってところがあります。
自分に対する接し方など、その人を見ています。その人がもっているものというか、相性もあります。
ゾウとの関係性はそうすぐに築けるものではないですから、濱田キーパーには、これからしばらくは、私と一緒にゾウの作業を続けながら、
ゾウとの距離を少しずつ縮めていってくれたらいいのかなと思っています。
経験を積みながら、身体と頭で覚えていって欲しいですね。

飼育員さんにインタビュー (情報誌マルキーズ2018夏号掲載)_e0272869_18591560.jpg

Q椎名キーパー、ありがとうございました。

それでは、ここからは濱田キーパーにお話をうかがいたいと思います。

ゾウさん担当になって三カ月近くになると思いますが、ゾウさんたちの中に入っての作業には慣れてきましたか?

今までも柵越しにはコミュニケーションをとってきていたのですが、やはり柵を介さない状態でゾウの中に入ることは、かなり緊張がありました。
ゾウの方も緊張していたと思います。

「見慣れない人が来たわ!」とばかりに鼻であちこち隅々まで調べてきたり、もみくちゃにされたり、プレッシャーをかけられたりしました。
砥愛はぐいぐい押して力比べしてくるし、媛も上から覆い被さってきますしね。最近やっと落ち着いてきたかなという感じです。

ゾウに囲まれると怖かったですが、怖いという感じを見せてはいけない、逃げてはいけないとそれだけは思っていたんです。
2ヵ月を過ぎた頃からやっと、僕がゾウの中にいるのが当たり前と、ゾウたちも少しだけ思ってくれてきたのかなって感じます。


Qホースで掃除をしている時、子どもたちがやたらと絡んでいますよね。

この人はちょっかいを出したら、どんな反応をする人なのかな?とか、きっと、試しているんだと思います。

見ていてわかると思いますが、僕がホースで掃除をしていると、砥愛はわざと絡んできているでしょ。

飼育員さんにインタビュー (情報誌マルキーズ2018夏号掲載)_e0272869_19084476.jpg

「止めて!止めて!」って片方の手で鼻を押さえながら、水撒きしています。水撒きの邪魔をされるから、水が跳ね返って自分の服はいつもびしょびしょです。
濡れるのは嫌だけど、砥愛にとっては遊びなんでしょうから、そうしながら、ゾウが自分に慣れてくれるのなら、それもいいかなと思っているんです。
今は毎日、着替えを持ってきています()


Qベテラン飼育員の椎名さんを傍で見ていて、ゾウさんとの接し方など、なにか気づいたことや感じたことはありますか?

椎名さんを傍で見させてもらって感じることは、本当にゾウに対して凄い愛情があるんだなと、改めて感じました。

どの子も決して置いてきぼりにしていない。
全てのゾウを同時に見ている。
たとえば、砥愛のトレーニングをしている時も、媛やリカをちゃんと見ているし、エサを多めに与えて退屈させないよう気配りされているんです。
優しいだけじゃない、厳しく叱るときもあります。でも、叱って終わりじゃない、その後のフォローをしっかりやられています。

ゾウたちが椎名さんを信頼しているのもわかります。まるで、椎名さんを四頭目のゾウのように思っているのかなあ()
自分も早くそうなれればいいのですが、そのためには、一緒にいる時間をもっともっと持たないといけないことはわかっています。
そして、精一杯の愛情を持って接していくことも・・・。ただ、まだ今はいっぱいいっぱいで、とにかくゾウに嫌われないようにと思いながら行動しています。

飼育員さんにインタビュー (情報誌マルキーズ2018夏号掲載)_e0272869_19095200.jpg

Qゾウの飼育員としてこれからどうしていきたいとか、なにか考えられていることはありますか?

 今は椎名さんが一緒にいてくれるから安心してゾウの中にも入ることができますが、まだ一人では何もできない状態ですから、
まずは早く一人で作業ができるようになりたいですね。   
そのためには、ゾウたちに信頼してもらわなければなりません。
特に媛は少し難しいところがあって、寝室に入る時、自分に対して、ここは私の場所なのよ、知らない人は来ないで!って、感じです。
椎名さんが大丈夫、大丈夫って媛の前足を撫でて落ち着かせてくれるんですが。目が怒っているのがわかるんです。

これから、飼育方法の見直しがされていくのでしょうけど、準間接飼育になるにしても、直接飼育を続けるにしても、
自分たち飼育員がゾウたちの精神的支えにならないと、あの子たちは幸せに暮らせないと思っているんです。
直接飼育ができている今のうちに、少しでもゾウの中に入って良い関係を築いていきたいですね。

そして、ゾウたちを少しでもストレスがない状態にしてあげたいですよね。
ゾウにとってストレスは排卵を止めてしまうこともあり、繁殖活動に影響します。
椎名さんがゾウの中に入って仲間として接してストレスフリーな状態でゾウを飼育してきたことは、とべが繁殖に成功してきた一つの要因だと思うんです。
自分たちはゾウの幸せのためにも、それを受け継いでいかなきゃいけないと思っています。そして、椎名さんの知識は凄いんです。
自分も知識を深め、これから経験を積んでいきたいですね。

(取材・文 山岡ヒロミ)




by taketoriouna | 2018-09-14 09:15 | アフリカゾウ家族


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