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いきものがたり

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2016年 11月 22日

椎名キーパーにインタビュー (マルキーズ秋号掲載)

命と向き合う 

― アフリカゾウ家族の近況 ―-


アフリカゾウ家族のことを追い始めてから五年、なぜ、次々と辛い試練が彼らに降りかかるのでしょうか。
情豊かなゾウ。大きな体の内にある繊細な心を持った彼らのことをもっともっと知りたい。そして、ゾウの素晴らしさを多くの方に伝えていきたいと思います。


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Qアフ君が亡くなって四か月が経ちました。椎名キーパーにとって、思い出すことはまだお辛いかとは思いますが、父親を失ってからの家族の様子をお聞かせいただけますか?

三十年以上アフリカゾウを見てきましたが、これほど家族の絆、家族愛を目の当たりにしたことはありませんでした。

アフ君が亡くなってからの雌三頭は、ご飯もすすまなくなり夜眠ることもままならない様子で、誰が見てもわかるくらい憔悴していました。
彼女たちの精神的なショックは、かなり大きかったのだと思います。
砥愛ちゃんは耳が折れ、眠れていないので、昼間、運動場で崩れるように眠りこける日々が続きました。媛ちゃんは鼻を垂れじっと佇み、リカさんは鼻を遠くに伸ばしアフくんの匂いを探している様子をしばしば見かけました。

 そんな中で、自分がしてやれることは、家族として傍に居てやること。
お世話をする飼育員という立場ではなくて、家族として彼女たちに寄り添って、悲しみを共有してやることくらいしかできません。
あとは、彼女たち自身がこの試練を乗り越えなければならないんです。

 リカさんは母親です。今までも様々な試練を乗り越えてきた子です。
人間に育てられた媛ちゃんも、今はゾウ家族の一員になってきています。
彼女たちは、きっと支え合って、より一層家族の絆を深めてくれると信じていました。

 媛ちゃんが家族になるために、自分は少し距離をとるようにしていたことは、前にもお話したと思いますが、
日向で眠りこけた砥愛ちゃんにそっと寄り添って日陰を作ってやる媛ちゃんの姿や、母親に自分から身体を寄せていった媛ちゃんの姿を見た時、
媛ちゃんはゾウの家族になったんだなあと、少しほっとしました。
と娘達は支え合って悲しみを乗り越えてくれたようです。

これこそが、ゾウの家族なんです。

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Q精神的ストレスでゾウは耳が折れたりするんですか?

精神的なもので耳が前に折れるというか倒れるんです。媛ちゃんや砥夢くんも、昔、折れたことがあります。
心が満たされると、また自然と治るんです。

今回の砥愛ちゃんの耳折れはひどかったですね。治りも悪かったです。
砥愛ちゃんは一番アフ君に遊んでもらっていましたからね。
柵を潜り抜け、アフ君のところにしょっちゅう遊びに行っていました。
アフ君も、ふざけてやんちゃしている砥愛ちゃんのことを叱ることもせず、構ってやっていましたから。

砥愛ちゃんにとって、アフお父さんがいなくなったことは、かなりダメージが大きかったのだと思います。
そして、アフ君の亡骸を4日間も置いておかなければならなかったことが、かなりゾウさんたちを動揺させてしまったのだと思います。
臭いに一番敏感になりますからね。

媛ちゃんや砥夢くんは、それぞれ辛い経験をしていますから、砥愛ちゃんだけは、このまま家族の愛情をめいっぱい受けながら、
すくすくと元気いっぱい育って欲しかったんですけどね。親心です()
なかなか、人生、いやいやゾウ生も、波乱万丈です。


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Q私の記憶では、確か一回目の耳折れは三週間くらいで治ったと思いましたが、また七月に耳が折れていましたよね。


砥愛ちゃんを退屈させないよう、また、寂しい思いをさせないように、タイヤやベルトの遊び道具を増やしたのですが、
やはり、牙を傷つけるんです。しかたなく、すべて撤去しました。

自分が関係しているのかどうかは定かではないのですが。
自分の体調のこともあり、また、四月からは中での作業を若い飼育員たちに任せていることもあり、
ゾウさんたちに触れ合う時間が減ったんです。
砥夢くんの耳が折れた時もそうだったのですが、自分が遊んでやらなくなったときに耳が折れたので、
もしかしたら、二回目の砥愛ちゃんの耳折れは、自分も関係していたのかもしれませんね。

タイヤを復活させたり、時間を作り遊んでやっているうちに、砥愛ちゃんの二回目の耳折れは治りました。
ゾウは本当に繊細な動物です。

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今、若い飼育員たちも頑張っています。ゾウと一緒にいる時間を増やし、それぞれが自分のやり方で、コミュニケーションをとる努力をしてくれているようです。自分が現場から離れることによって、若い子達がゾウさんとの絆を深め信頼関係を築いてくれることが、今後のためにはいいのかなと思っています。

Q現場から離れるとおっしゃいましたが、椎名キーパーとして、これからのアフリカゾウ家族に対しては、どのような形でサポートをしていかれるのでしょうか。

自分は、ゾウさん家族の次のステージ、彼女たちの将来を見据えたアクションを起こしていかなければなりません。

アフ君の死とは関係ないのですが、以前から媛ちゃんや砥愛ちゃんの伴侶となる雄ゾウの導入を考えていました。
ただ、とべに雄ゾウがいなくなったことで、現実味を帯びてきたのは事実です。


Q国内にはお婿さん候補はいないのでしょ?海外の動物園からですか?
アフリカ原産国からはワシントン条約で取引ができないんですよね?

 国内には、ちょうどいい年頃の雄ゾウがいないのが現状です。今、アメリカやヨーロッパの動物園などに、
色いろとあたってもらっているのですが、なかなか難しいようです。

アフリカからは商業取引はできないのですが、動物保護区で増えすぎたゾウを譲り受けることは可能です。
もちろんお金は必要です。ゾウを買うという形ではなく、ゾウを譲り受ける代償としての必要経費になります。
そのお金を、ゾウが棲むナショナルパーク保護区の運営資金として充ててもらうんです。

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 日本でもイノシシやシカが農地を荒らして害獣扱いされるように、アフリカの動物保護区でも、ゾウが増えすぎると、
ゾウが農地を荒らし害獣にされてしまうんです。
また、限られた保護区の中ではキリンやサイなど色んな動物が暮らしています。
それらのバランスを保つためにも、増えすぎたゾウを、言葉は悪いですが、間引かなければならないんです。
そのゾウを動物園等が譲り受けることができるというわけです。

ただ、一頭だけというのは難しいんです。アメリカの動物園が譲り受けた時も、十頭単位だったんです。
向こうは、ある程度まとまった頭数の搬出を望んでいるようです。
そうなると、とべ動物園だけでは引き受けることができませんので、他の園館さんにも協力をお願いしなければなりません。
しかし、高額なゾウですから、簡単には話も進まないでしょうね。

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また、大型動物の導入には、輸送費や施設整備の問題など、県民の皆さんの理解とご協力を得なければできないことがあるかもしれません。
これから、みなさんに色いろとお願いすることがあるかもしれませんが、その時は、よろしくお願いします。 (取材・文 山岡ヒロミ)











また、大型動物の導入には、輸送費や施設整備の問題など、県民の皆さんの理解とご協力を得なければできないことがあるかもしれません。これから、みなさんに色いろとお願いすることがあるかもしれませんが、その時は、よろしくお願いします。 (取材・文 山岡ヒロミ)



by taketoriouna | 2016-11-22 21:59 | アフリカゾウ家族


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