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いきものがたり

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2015年 09月 01日

椎名キーパーにインタビュー (情報誌マルキーズ2015年7月号に掲載)

アフリカゾウ家族の近況

桜そして新緑に覆われる春の動物園は、毎日、家族連れや遠足で訪れる子どもたちで賑っています。

五月三十一日、砥愛ちゃん二歳のお誕生会が盛大に開催されました。


 

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Q砥愛ちゃん二歳のお誕生日を迎え、本当におめでとうございます。お誕生会には多くのお客様がお祝いに駆けつけてくださったり、
全国からプレゼントもたくさん届いていましたね。
そして、古賀賞という業界最高の賞を受賞され、椎名キーパーにとって、嬉しいことが続いていますね。

毎回のことですが、媛ちゃんや砥愛ちゃんのお誕生日を無事に迎えるたびに、感慨深いものがあります。

媛ちゃんは色んなことを乗りこえてきました。お誕生日には、そんな彼女の頑張ってきた姿を思い出し、体の成長だけでなく心の成長をお祝いし、
「この一年も、よく頑張ったね。」と言ってあげたいですね。
また、おてんばな砥愛ちゃんは私達飼育員をヒヤヒヤさせどおしですが、一つ一つ新しいことを覚えながら健やかに育ってくれていることに、
「ありがとう。」と感謝したいんです。

そして、全国のみなさんがこの子達の成長を見守ってくださり、お誕生日には一緒にお祝いしてくださることが、
本当にありがたいことだなあと思います。   

また、今回の古賀賞の受賞は、30年近くもこのゾウさんたちと共に歩ませてもらった私にとって、何よりものご褒美であったと同時に、
これからも、この子達家族のために、飼育員として、また家族として、精一杯のサポートをしていかなければならないと身の引き締まる思いで受け止めています。

動物の大切な命を預かり、その命を絶やすことなくつないでいくことが、飼育員の使命でもあり、
媛ちゃんや砥愛ちゃんが母親になる日が来てこそ、心から喜べると思っています。


Q私がアフリカゾウ家族と出会って四年近くになりますが、今回初めて家族四頭が一緒に過ごすところを見ることができて、とても感激したのですが・・・

 ただ、お客さんが喜んでくれるからという理由で、一緒にされたわけじゃないですよね。野生でも成長した雄は群れから離れ行動を共にしないのに、
アフお父さんと子どもたちを一緒に過ごさせることは、飼育上、なにか目的があるのですか?


 

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そうですね。媛ちゃんや砥愛ちゃんが、命をつないでいってくれるためには、成長した雄ゾウに慣れてもらわなければならないのです。
柵のないところで、雄ゾウを体感してもらう。媛ちゃんにお婿さんを迎えることができたとしても、雄ゾウの威圧に怯えてしまっては、ペアリングはうまくいきませんから。
これから、何回か一緒にしてみるつもりです。


Q砥愛ちゃんはお父さんに近づいていっていましたが、媛ちゃんは怯えた目をして、距離をとっているように見えました。
椎名キーパーが傍に行くと、やっと安心した表情になっていましたが、ひとりぽつんと離れたところにいる媛ちゃんを見て、なんだか切なくなってしまいました。

 

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媛ちゃんの行動は想定内でした。
やはり人工哺育で育った彼女は、砥愛ちゃんのように小さいときから、柵越しにお父さんを間近に感じたり、
じゃれて触れ合ったりすることが無かった分、お父さんと仲良くなりきれてないところがあります。
成長してからは、柵越しにお父さんと触れ合うことはしていますが、柵があるので、それ以上は、威圧してこない攻撃してこないことがわかっているんです。
やはり、ゾウの中で自由奔放に育った砥愛ちゃんとは違います。

               



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媛ちゃんは人間の中で育ったことで、ゾウとして、これからも色んなことを乗りこえていかなければならないでしょう。
彼女に試練が訪れるたびに、人工哺育に踏み切ったことは間違いじゃなかったのかと自問することがあるんです。
でも、あの時は、母親から引き離さなければ、媛ちゃんの命を守れなかったですからね。

媛ちゃんがゾウのお母さんになる日まで、媛ちゃんを傍で見守りながら、そして、必要な時は突き離し、彼女自身がゾウとして体も心も大人になり、
そして、母親になったときが、人間のお母さんとしての私の役割が終わるときだと思っています。

        (取材・文 山岡ヒロミ)




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by taketoriouna | 2015-09-01 16:50 | アフリカゾウ家族


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