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いきものがたり

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2014年 10月 08日

椎名飼育員にインタビュー (2011年8月取材)

かぐや媛もこの10月1日から4年目に突入。
この機会に是非、おうながとべ動物園のアフリカゾウ家族のサポートをするきっかけになったマルキーズの取材記事をと思い、
ずっと探していた原稿がようやく見つかったので、ご紹介しますね。

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というのも、2011年7月末に椎名キーパーに取材して記事を書いたわけですが・・・
それまでのおうなさんの生活の中にパソコンたるものは全く必要としておらず、原稿手書きじゃあな~ってことで、しぶしぶパソコンを使ったんです。
原稿を書くのに、キーの場所を探しながら何時間かかったことか・・(^-^;
印刷してマルキーズ編集室に渡し、はい!私の任務終わり~  だったんですから。
後に「かぐや媛」につながるなんて予想だにせず、その原稿が残っていただけでもラッキー!
当時、写真の挿入なんてできませんでしたから、今ある画像を差し込み実際とは異なる写真もありますが、今回掲載いたしま~す。


椎名飼育員にインタビュー (2011年8月取材)_e0272869_20475883.jpg

でもね!今考えると恐ろしや~
取材経験ゼロ、記事を書くのも初めて、それでいきなり動物園に椎名キーパー名指しで取材依頼に行ったんですから・・・
あの日本一と称されている椎名キーパーって知る由もなく、ただ、NHKの番組「ディープピープル」を見て、「ゾウたちは家族、命を預かっている。」
と言われたこの人に話聞きたい!ただ、それだけで・・・
前もって調査するとか、ゾウのこと調べておくとか、な~んもなしですから・・・(;^ω^)
今思うと、椎名キーパーには大変失礼なことをしてしまいました。
ただ、さすがインタビュー慣れしていらした椎名キーパーは、そんな私の頓珍漢な質問にまでうまく答えてくださり、このような原稿ができた次第です。

「アフリカのゾウの孤児院」「ひとりぼっちの媛ちゃん」「砥夢くんはいずれ引っ越すこと」
こんなに近くにいながら何も知らなかった自分。県民は知っているのだろうか。この子たちを支えることはできないだろうか。
家族、人間と動物の絆、命の尊さ。 この家族の物語が私の琴線に触れてしまったんですよね~。




命と向き合う  「強制」ではなく「共生」 共に生きること
                             ―――とべ動物園から――――


「爪王」「オオカミ王ロボ」など、動物ものの本が大好きだったという少年。

ゾウとの運命的な出会いは、サーカス会場で表に繋がれていた1頭のゾウ。
そのゾウの寂しそうな目は少年の心を捉えて離れなくなりました。

そして、少年ジャンプの連載マンガ「ぼくの動物園日記」のモデルである西山登志雄(上野動物園・飼育員)さんに憧れ続けた少年は、
現在、ゾウの飼育暦30年。

ゾウを扱う技術では現役最高峰と称されている、とべ動物園・ゾウ担当飼育員、椎名修さんにお話を伺いました。

私達の目の前で、椎名さんの姿を見つけた子ゾウの媛ちゃんと砥夢君は、一目散に駆け寄って来て長い鼻を精一杯伸ばして、
椎名さんに甘えていました。

そのゾウさんたちの目は嬉しそうに輝いていたんです。

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ゾウの飼育方法には、柵の中に直接入ってお世話する直接飼育と、柵越しにしか飼育しない準間接飼育という方法があるようですが。

 安全管理の面から準間接飼育の形をとっている動物園もありますが、ここでは直接飼育でやっています。

今まで、ゾウさんを30頭くらいみてきましたが、見ながら触りながらやってきて、ゾウさんの一番いい飼い方は直接飼育だと思っています。

危ないか危なくないか!ゾウさんの行動を見ていたらわかります。大切なのは「間合い」人間との間合いをゾウさん達もは持っているんです。
人間の方も「間合い」を持つこと。踏み入れてもいいことと、いけないことを見極め、事故が起こらないような状況を作ってあげることが大切なんです。

確か、この動物園には、アジアゾウとアフリカゾウ2種類のゾウさんがいるんですよね? 

インドゾウ1頭とアフリカゾウ4頭が暮らしています。

インドゾウに代表されるアジアゾウの場合は、現地である程度調教され、人間が扱える状態になった子がくるのですが、
アフリカ象の場合は、野生で孤児だった子を連れてくるんです。
だから、最初からこちらで『ゾウさん』をつくっていかなければいけないんです。

アフリカゾウのアフちゃんとリカちゃんは、1歳くらいの時、アフリカからいきなりこの動物園に来たので、
まずは自分たちを信頼してもらうことからでした。
環境、人間、ご飯に慣れてもらわなければいけないし、環境に慣れたら、後は徐々に信頼関係を築いていくんです。
最初のうちに躾をちゃんとしておけば、ゾウは賢い動物ですから、大きくなっても昔のことを覚えているんです。

タイやインドで行われている調教という方法は、ゾウを追い込んでから立ち上げる。
最近では、トレーニングって言い方をしていますけれど、そういう押さえつける「強制」ってやり方もあるんですが、
自分は、共に生きる「共生」だと思っているんです。

ゾウさんも大人になってくると自分がNO.1になろうとするし、子孫を残そうとします。

ゾウが自分のステータスを築こうとしている時に、昔のやり方で、力ずくで押さえてしまっては、繁殖は難しくなります。
だから、伸びようとしている時は伸ばしてあげる。そのことによって繁殖がうまくいったりするんです。

あと、動物は人間の気持ちや体調も敏感に感じとります。こちらがイライラしていると象さんもピリピリするし、
二日酔いの時はそれもわかりますし()

動物園の動物は、自然に近いサファリの子たちとは違って、神経質になりやすいんです。
どんな動物でもですが、あまり可愛い可愛いで箱入り娘にしてしまうと、環境の変化についていけなくなったり神経質になります。

ペットでも同じこと。箱入りにしすぎてもいけないし、だからと言って押さえつけるのでなく、
基本的に命と命、対等だと思っています。
個は個として尊重してあげる。
その代わり躾の部分、トレーニングはしてあげて、対等・家族ということで同じような目線で付き合ってあげることが大切です。

ゾウさんたちは、もう自分の家族みたいなものです。やきもちだって焼くし・・・

媛ちゃんは、自分たちが弟の砥夢君と遊んでたりすると、近づいてきて気を引くようなことをしてみたり、
ゴロゴロしてみたりするんです。   《キャー可愛い》


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媛ちゃんは、いわゆるお母さんの育児放棄によって、人の手で育てることになり、それが、動物園で初めて
の人口飼育の成功例になったわけですが。
人間の場合、親の身勝手で育児放棄するケースをよく耳にするんですけれど、媛ちゃんのお母さん、リカちゃんの場合は、
どうして、育児放棄するようなことになったんでしょうか?

弱い子に関して、自然淘汰に近いものはあっても、基本的に動物には、育児放棄はないはずなんです。
何かのストレスか、環境的に合わないのか、また生い立ちによってくるんです。

野生のゾウの場合は、母系集団で生活するので、赤ちゃんができたら、まわりのサポートがありみんなで子育てするんです。
また子どもは、集団の中でお母さんの発情を見て、オスとの交尾を見て、そして妊娠、出産、子育てを見ながら学習していくんです。

でも、リカちゃんの場合は孤児だったので、そうゆうことを全く知らない。だから、媛ちゃんが産まれても、自分の子供と認識できない。
でも母性があるから気になる、何とかしてあげたい、でも子育ての仕方がわからない。
その繰り返しで、結局、育児放棄って形になっちゃったんです。

リカちゃんは、媛ちゃんの子育てに失敗したので、彼女には、やはり本当の意味での母親になって欲しかったんです。
ゾウさんは妊娠期間が2年あります。第2子の砥夢くんの妊娠中に、媛ちゃんの成長を見てもらいながら
母性を出してもらって、子供の扱いを学習してもらったんです。
そうしたら今度は、ちゃんと自分で砥夢君を育ててくれたんですね。

ゾウの場合やはり、家族として集団で生きていくというのがベストなんです。
鼻が長くて、耳が大きくて外見はゾウさんなんだけれども、内面はゾウさんじゃないってのでは、困ります。
ゾウが本来持っている本能を、うまく芽生えさせてあげたいんです。

 そして、今ちょうど、リカちゃんに3頭目をと思っているところなんです。


 凄い!動物を展示して見せるだけでもなく、子供を産ませるだけでもない。ゾウさんの本能を引き出し、家
族の絆や群れの意識を持たせることまで考えていらっしゃるんですね。そして、大人みんなで子どもを守り育てるなんて、
人間もゾウから学ばなければいけませんね。

他に、動物から教えられることってありますか?

 
やっぱり母親の愛情です。媛ちゃんが小さい時、熱中症にかかってミルクも飲まないでぐったりしている時があったんです。
すると、異常を感じたお母さんは、自分の餌を投げて生きているかどうかを確かめてみたり、水をかけて起きなさいと促してみたり、
そして起き上がると安心するんだけど、また媛ちゃんはぐったりする。何度も同じことを繰り返すんです。

今、砥夢君と子離れの時期がきてるんですが、離れるとやっぱり気になっているのがわかるんです。
もう子どものことが心配でしょうがない。母親の愛情はすごいです。


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今までで一番心に残っている出来事は?

やっぱり、うちの子たちの誕生です。

とべ動物園に勤める以前の群馬でも多摩でも姫路でもですが、自分が携わった子たちが、子どもを産んでくれているってこと。
自分が見てきた子たちが、ちゃんと子どもを産んでくれたってことは、飼い方が間違ってなかったということかなとも思いますしね。

ゾウさんは繁殖自体が難しいですから、動物園で3世が生まれたケースはほとんどないんです。
だから今度は、媛ちゃんに子どもを産ませてあげたいし・・
それは媛ちゃんのためでもあるし、彼女を生んでくれたリカちゃんのためでもあるし、自分のためでもあるんです。

3世の誕生が、自分の最終目標なんです。



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媛ちゃんが大人になって妊娠出産なんて、素敵! 私たちもずっと見守っていきたいです。

ただ、とべ動物園は全国動物園人気ランキング5位のわりに、今ひとつ地域の盛り上がりが少ないような気がするのですが・・・

そうですね。大きな話題のあるときは、わーっと来て下さるのですが、すぐに潮が引いたような状態になってしまいますね。熱しやすく冷めやすいんですかね。

動物園ていうのはレクリエーションの場っていうウェイトが大きいでしょ。
確かに、お客さんに来てもらって楽しんでもらうことも大事なんだけれども、それだけではやはりいけない。
環境教育を実践できる場所でもあるわけです。
また、動物たちに対しては、もの云わぬ彼らの気持ちを汲んでやり、社会性をつくっていき、その命を預かり次世代へ繋いでいくという役割も担っているんです。 

人間も含め、生き物にとって一番大切な命や自然について学べる場所が、動物園だと思っています。

動物には打算がありません。本能で生きているんです。

是非、動物園に足を運んでいただいて、動物の凄さ、愛らしさを知っていただきたいし、命の尊さ、輝きを感じとっていただきたいですね。

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今日はありがとうございました。椎名さんの、ゾウさんと向き合う姿から、私達の社会生活にも、子育てにも、
ペットを飼うにおいても学べることがたくさんありました。

命は人間だけにあるものではない。命は対等であり、その命をあずかっている飼育員さん達の熱い思いを知ったら、
ますます動物園が大好きになりました。

皆さん、素敵なアフの家族を見に来てくださいね。

                                                (取材・文 山岡ヒロミ)




by taketoriouna | 2014-10-08 11:00 | アフリカゾウ家族


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