椎名キーパーにインタビュー アフリカゾウ家族の近況 (マルキーズ情報誌2017年7月号掲載)

アフリカゾウ家族の近況
   

椎名キーパーに最近の家族の様子をおうかがいしました。
  

六月一日、砥愛ちゃんが無事に四歳の誕生日を迎えることができました。

砥愛ちゃんは、たまに、お腹を壊すことはありますが、元気に育ってくれていると思います。

もう四歳ですから、親離れ子離れに向けて、リカお母さんと分離をして媛ちゃんと一緒にいる時間を少しずつ増やしているところです。

人工哺育で育った媛ちゃんに比べると、砥愛ちゃんは体も心もたくましいという感じですが、先日、ご飯に興味を示さなくなって、ぐったりしていたんです。

あの子が、二日間もご飯をあまり食べないなんてことは今までになかったですから、ちょっと心配しましたね。

動物園では、動物に異変があるとすぐに獣医が駆けつけ薬を処方したり痛み止めの注射をして対処できますから、その点は安心なんですが・・・。

自分たちが帰った後、お部屋でどんな様子なのか、痛がってないだろうかと、やはり気になります。

昨年のアフ君の事故があって以来、毎朝、ゾウ舎の扉を開けて元気な姿を確認しては、ホッとする毎日です。

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Q夕方、お部屋に戻ってからが長いですから、ご心配ですよね。朝、扉を開けた時は、ゾウさんたちはどんな感じなのですか? 
  

動物は凄いですよ。時計を持っているわけじゃないのに、時間がわかっているんでしょうね。

そろそろ飼育員が来る時間、足音で誰かもわかっている。扉を開けると、鼻を出して朝のご挨拶をしようと待っています。

夜は、三頭をフリーにして二部屋を自由に使ってもらっているのですが、リカさんと媛ちゃんはだいたいいつもの場所というのが決まっています。

砥愛ちゃんは、ちっちゃいウンチがあちこちに転がっているところを見ると、お母ちゃんのところに行ったり、

お姉ちゃんのところに行ったり、夜もフラフラと遊んでいるみたいです。

ウンチを投げて遊び壁じゅうにウンチが飛び散っていたりすると、朝から掃除が大変ですけど()
   
  

Qかわいいなあ。夜、どんなことをして過ごしているのか、観察してみたいですね。

ところで、運動場がアジアゾウ舎とつながって広くなったのに、上の運動場はまだ全然使ってないようですが・・・。
  

ゾウは大変警戒心が強い動物です。新しいこと、新しい場所、新しい人に慣れてもらうには、時間をかけなきゃいけないんです。

いくら高級なメロンでも、美味しい梨でも、食べたことのないものは食べようとしなかったでしょ。

用心深い動物なんです。根気強く、ゾウさんたちと付き合わなければならない。

好奇心旺盛、怖いもの知らずの砥愛ちゃんだけは、自分が階段の上から呼ぶと最初からスタスタと登ってきましたけどね()

今では、ひとりで階段踊り場まで登っています。もう少ししたら、上の運動場にも連れて行こうと思っています。

砂を入れて、砂浴び場にできたらいいかなと考えているんです。

リカさんと媛ちゃんはプール際の新しくコンクリートが打ちなおされたところでさえ踏もうとしませんでした。想定内でしたけどね。

ですから、時間をみつけては、一歩ずつ少しずつ上の段に登れるよう誘導訓練をしています。

階段が狭く、体が大きいリカさんと媛ちゃんは自分で方向転換ができないので、三段四段と登れてもそれ以上進めないと、バックで下りるしかないんです。

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先日、媛ちゃんは調子に乗って四段目まで登って来たけれど下りられなくなって半べそ状態になってしまい、

結局、階段途中で体を少しずつ回して下りさせたんですけど、それがどうもトラウマになったのか、最近は階段に近づこうとしなくなっています。

もう少し時間をかけて、ゆっくりと彼女の恐怖を取り除いてやらなければならないでしょうね。

こちらが焦ってはいけません。ゾウさんたちをよく観察しながら見極める。そうしないとストレスを与えることになりかねません。

ゾウさんのペースに合わせ、キーパーはうまくサポートしてやることが大切なんです。 

警戒心が強いのは人間に対しても同じです。動物たちは人間を見ています。

新しく担当になったキーパーが馴致をさせようとしても、ゾウは言うことを聞いてくれません。

号令をかけるときも、号令で動くということはある意味服従することですから、ゾウさんにもプライドがあるので、

初めから強い号令をゾウさんは好みません。

号令に反応しないのはその人の号令を聞いていない、その人をまだ認めていないということなのです。

焦っては却って逆効果です。時間をかけ、愛情をかけることで、ゾウさんに慣れてもらえる、認めてもらえるのです。

若いキーパーたちはゾウさんと過ごす時間をより多く持つことで、信頼関係が構築され、もっともっといい関係が結べるはずです。

ゾウさんにも感情があります。全てにおいて、一足飛びにできることなんてないのです。
  
  

Qそう言えば、先日、若い飼育員さんたちがトレーニングをしているところを見せてもらいました。

椎名さんの後継者ということで、彼らの中でも色いろと葛藤があるみたいですね。

ゾウさんたちのためにも、椎名さんのように家族として接してやりたい。しかし、人間の安全を考えると難しいって。

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ゾウさんをどうしたいのか?何のためのトレーニングなのか?そのイメージをキーパーがしっかり持っていることが大切です。

あとは、トレーニングの回数を重ね、トレーニングの意味をゾウに伝えていかなければなりません。

いくら、賢いゾウさんでも、私たちが思っていること伝えたいことを最初から理解するわけではありませんから、時間をかけ、

トレーニングの意味や内容を教えることが大事になってきます。

個体に合わせて、手法やご褒美として与えるエサの選定も必要です。それぞれ好物のエサが違います。

また、エサを与えるだけでなく、褒めてやる、体に触れてやる、個々のゾウさんによって嬉しいことが違ったりします。

ゾウさんたちも楽しみながらトレーニングできる状態までもっていけるといいですね。

ゾウの飼育は今でも直接飼育が一番いいと自分は思っていますが、組織で動いているので、そうもいきません。

何よりも人間の安全を最優先に考えないといけないですから、直接飼育を継続していく難しさはあります。

どこの動物園でもですが、事故が起きる可能性がある以上、準間接飼育というのが時代の流れになってきています。

特に媛ちゃんに関しては、自分がいなくなった後、直接飼育は難しいでしょうね。

だからと言って、いきなり間接飼育に切り替えるなんてことになったら、媛ちゃんはストレスを感じてしまいます。

直接飼育をしながら、準間接飼育に向けての準備を常日頃からやっていく必要があります。

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砥愛ちゃんは四歳になりましたが、信頼関係を構築するにはとても大事な時期です。

小さい頃のお付き合いの濃さによって、八歳、十歳、大人になってからのキーパーとの関係が違ってくると思っています。
小さい頃は、遊んでやることも必要です。もっと上手に砥愛ちゃんと付き合って、距離を縮めてくれたらいいのかなと思っています。

個々のゾウさんたちのより良いクオリティ・オブ・ライフのためにも、

それぞれのゾウをより安全にストレスを与えることなく取り扱える方法を確立させていかなければなりません。

そのために、若いキーパーたちは、動物に対してどれだけの時間とどれだけの愛情をかけてやれるかだと思うんですよ。

そして、知識と経験を積んでもらいたいですね。
  
  

Q「ガンバレ!若いキーパーさんたち」ですね。今日はありがとうございました。

          (取材・文 山岡ヒロミ)


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by taketoriouna | 2017-08-18 17:20 | アフリカゾウ家族 | Comments(0)
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